早足で廊下を歩いていたらチャイムが鳴った。

あ、授業、行きそびれた…。

途中から講義に入り込むヤツもいるけど
極力目立ちたくないから
授業での情報収集は早々に諦める。

廊下を1人で歩いてるのも目立つから
食堂があればそこで暇を潰すのがいいかもしれない。

「少し早いですけどお茶の時間にしましょう。」

俺の横を
高等科の女子の一団が通った。

優雅なことを言ってるが、要はサボりである。
説教するつもりはないけど、
彼女たちが食堂に行くんだったら都合がいい。

俺は8メートルくらい離れて
女子の一団についていく。

変質者とは思われない離れ具合。

1人見覚えがいる女子がいるようだが…。
って、あれ、ナターシャさんだ…。
大量の女子に囲まれてるが大丈夫か?
私刑じゃないよな?

女性は恐い生き物だって
よぉ〜く知ってるけど
後から考えると、私刑は暴走のし過ぎだった。

悪趣味だとは思いつつも
耳をすまして、会話を拾う。

「プリンセス、お茶の好みは何ですの?」

「ん〜、なんでも?」

ナターシャさん、
プリンセスとか呼ばれてるけど
正体ばれてんの?!

女のカンは鋭いって言うしなぁ…。

「プリンセス、好きなお菓子はありますか?」

「ん〜、なんでも?」

ナターシャさんはニコニコしながら
あたりさわりのない答えを返している。

不安な気持ちで見ていると
ナターシャさんが俺に気づいた。
俺に
やれやれ、と言わんばかりに
軽く肩を竦めて見せて
女子たちの会話を続行する。

…もしかして、さぼったほうが
情報を集めやすいんだろうか?

なんとなく納得いかないけど
授業じゃ
うまく情報を集められなかったから
さぼってみるか。

そもそも目的は情報収集だしな。
俺は8メートルくらいの距離を維持しながら
ナターシャさんがいる団体についていき
無事食堂に辿り着いた。

ナターシャさんは
そのまま女子に囲まれて
お茶をしている。

俺には話す相手がいないので
周りの会話に耳を傾ける。

しかし、ナターシャさんは
なんというコミュニケーション能力の持ち主だろうか。

ぼっちで周りの会話をぼけっと
聞いているだけの俺とは全く違う。

どっかの団体に潜り込んだ方が早いかな。

早めの昼食をとりながら
考え込んでしまった。