「で、なんなんだラウザさん。」

少し離れつつ訊いてみる。

部屋にまで居座ってるのは
なんか用事あるからだと思うんだけど。

「僕はそっちの事情を聞いていない。」

「そっちの、って俺にはそっちの趣味ないから。」

「いや、勇者の趣味とかどうでもいいけど、ターゲットとどういう関わりが?」

微妙に会話が噛み合ってない気がするけど
それはきっと些細なことだから気にしない。

「全部憶測だが、どうやら俺たちは強い魔族に積み重ねた時間を奪われたようだ。」

積み重ねた時間、か。
イルルがしゃべったと思ったら
なんか妙に詩的な表現をするので
おぢさんはイルルの頭の中身が心配だ。

「本来の俺たちが今の外見より15年ほど歳をとってると言ったら信じるか?」

ラウザは絶句した。

「それは、信じてもいいけど、勇者さんって今が勇者適齢期じゃ?」

「本来は34歳だ。」

ラウザは驚いた様子だったが
素直な感想を言わないだけの優しさは
持ち合わせていたらしい。

「トロンコロンの町一個分の人々に若返りが発生している。おそらく解決なんてしていない。」

イルルは
いつもよりも覇気がない声で
ぼそぼそとしゃべると
ラウザから目を逸らしてしまった。

どうやらイルルでさえ、
ラウザは恐怖の対象らしい。

「若返るっていうのは生物の自然な現象に逆らっているから何か無理が出てくると思われ。」

リーヴェがこんな状況なのに
ニヤニヤしながら
イルルの説明に補足してくれた。

「まぁ、マリスイーなら図書館があるから色々手の打ちようがあると思っただけだ。」

なるほど。

とか言ったけど
すごーく今さら聞いた気がする。