リーヴェはちびちびとコーラを飲みながら
周りの様子を見ている。

「若返ってないヤツのほうが少なそうだ。」

リーヴェが言うとおり、
周りから聞こえてくるのは
突然若返ったことによって
うまくいかなくなってしまったことの
不平と不満だらけだ。

「マリスイーには図書館があるようだな。」

「マリスイー?」

リーヴェが珍しく食いついた。

「マリスイーは学術都市で、学びたい者は誰でも学べる。金は必要だけど。」

王立大学と士官学校しか知らなかったから
そんな街があるなんて初耳だ。

「この街にこれ以上いても収穫はなさそうだ。マリスイーに行ったほうがよくね?」

そうかもしれない。

「じゃあイルルとナターシャさんに連絡して出発か。レグナくんにも、知らせられたら知らせよう。」

「どうでもいいけど18歳くらいなのはぎりぎりセーフだな。」

リーヴェがよくわからないことを言っている。

俺が不思議そうな顔をしていたのか、
リーヴェが解説してくれた。

「飛行車を運転できる年齢のぎりぎり。シルティアでは18歳以上じゃないと運転できないからな。」

俺は運転できないから
全く気にしていなかった。

俺とリーヴェは適当に席を立って
会計を済ませる。



イルルとナターシャさんが
酒場の向かい側にある喫茶店から出てきた。

2人と合流し、
そのまま歩きながら話し始める。

「ぽこぽん、マリスイーにだな…」

イルルが言いたいことが
すぐにわかってしまった。

「学術都市があるんだろ。とりあえず図書館とかもあるみたいだしマリスイーに行くぞ。」

「何もわからんかもしれんがな。」

手がかりが無いとイルルだけが困るんだけどな。
イルル以外は育ちきった直後の体だが、
イルルは育ち始めてもいない。
見るからにひ弱な様子だし。

とは言っても(思っても)
誰も見たことがない無駄な若返りの原因なんて
簡単につきとめられるかわからないのは事実だ。

イルルは
現実主義を通り越して悲観的、なんだが
今回ばかりは
イルルが言うとおりに、期待値は薄い。

しかし、俺がそれを言って
味方の士気を下げるわけにはいかない。

「考えるのはマリスイーに着いた後だ。リーヴェ、頼むぞ。」

一応、年長者っぽく仕切ると

「ぽこのくせに何偉そうにしてんだ。」

ぽこっ!とイルルに叩かれた。

子猫にじゃれつかれているかのように
全く痛くなかった。

今はこんなイルルだが
長じればイルル本人よりデカイ人間を
パンチで吹き飛ばすようになることを
俺は知っている。

猫に対するように
適当にじゃらしながら
マリスイーを目指すことにした。