忘れ物…、レグナくん。

「ナターシャさん、レグナくんどうしよう?」

「伝言を残すから大丈夫。」

「そうだな。」

イルルはあっさり外に出ていった。

俺とナターシャさんは
リーヴェを先導にして外に出る。
「ナターシャさん、勝手に出発していいのか?」

「僕は、もう子供じゃないからのぅ。それに今はぐずぐずしてる場合じゃないし。」

「なんというか、男気があるお姫さまというか。」

「誉め言葉として受け取っておくかのぅ。」

ナターシャさんは優雅に微笑むとリーヴェについていく。

俺もリーヴェとナターシャさんから
はぐれないようについていく。



イルルは飛行車の横でおとなしくしていた。

リーヴェが鍵を開け
それぞれ適当に乗り込む。

「行くぞ。」

リーヴェはそう言って車を発進させる。
次の瞬間、リーヴェが言った言葉。

「次どこだっけ?」

知らずに車出したんかい!

俺は久しぶりにエクトプラズムが混入したため息をついた。
もう脱力感しかない。

俺のエクトプラズムを削るのは
イルルとリーヴェであることを
再確認させられた瞬間だった。

「どこに行くかは誰にも言ってないから普通に順路でよくないかね?」

「順路と言ってもさすがに布団で休みたい年頃だな…。」

30歳を少し過ぎたあたりからだが
睡眠をとった環境が悪いと疲れが抜けないのだ。

「そうじゃのぅ…。」

ナターシャさんが同意してくれる。

「プラーティーン城での生活は確実に生活水準を上げたしな…。」

「生活水準云々は置いといて行く場所決めるか…。」

イルルが地図を見ている。

地図というものは
俺にとっては意味不明の絵でしかない。
おそらくナターシャさんにとっても同様だと思う。

行先の決定やリーヴェに対する進路の指示などは
イルルに任せるのが無難だ。

「プラーティーン城から南東の町がいいか?トロンコロンって町。でかい港も近くにあるしな。」

「港に近いなら特に問題ないかな。」

「そうじゃのぅ。」

「じゃあトロンコロンに向けてかっ飛ばすぞ。」

リーヴェはそう言うとスピードを上げた。

ウードロードさんに
きちんと挨拶できなかったのが
ちょっとばかり心残りだった。