そんな不安は取り越し苦労だったようで。

とりあえず、イルル達は
王都付近でデルフさんと別れた後
飛行車をかっ飛ばして戻ってきた。

「おかー。」

「おう、ただー、と言ってゆっくりしたいとこなんだが、王都の動きが怪しい。早く出発したほうがいいかも。」

イルルは適当な挨拶をすると
そのまま出発できるように、なのか
荷物をおろさない。

帯刀したままなので
刀は無事に回収できたようだ。

リーヴェが時々つっかえながら魔法を詠唱している。

遠見の魔法らしい。

「国軍じゃないな。この紋章は…シュバルツバウム家?」

「「「はぁ?!」」」

「シュバルツバウム家…の私兵に見えるな。30人くらいいるかも。」

「目的はなんだ?」

イルルの目が恐い。

「遠聴の術は使えないからなんとも。」

「使えないのは技量不足か?時間がかかるからか?」

イルルの追及がマジで恐い。

「そもそも使い方知らんし。」

「そうか。まぁ、逃げるが勝ちなんじゃ?」

逃げるって、誰が?どこに…?

「俺だけ先に現地入りすれば解決。」

えっと、逃げるのはイルル?

「生家から追われる心当たりは腐るほどあるからな。」

「ホントにイルルを連れ戻すための私兵なのかはわからなくね?」

リーヴェが言うことは最もだが。

「いやいや。賊や魔物の討伐なら私兵は使わない。」

「そうかもしれんのぅ。」

結論、さっさと出発しよう。でいいかな…。

「とりあえず出発しようぜ。ナタの実家に迷惑かかるかもしれないし。」

「迷惑かどうかと問われると大したことはないんじゃがのぅ。」

ナターシャさんはそう言ったけど。

「忘れ物があったら後から連絡すればいいから、とりあえずここを離れるのが先決じゃのぅ。」

ナターシャさんは
そのへんの荷物をさっくりと回収すると
もう飛行車に乗る勢いだった。