隠れる必要は無かったんだけど
しばらくレグナくんの様子を見ることにした。

「うわぁ…。羽だいぶ抜けちゃったよ…。天使って、もうそんなに珍しくないはずなんだけどな…。」

ダレた調子の独り言が聞こえる。

「持たざるものにとっては翼は珍しいのだよ。そう愚痴るでない。」

独り言かと思ったら、話し相手がいたらしい。
自治区で地位のある天使のようだ。

「私や君は地上任務を請け負ったわけで、そうである以上は人間とうまく共存しなければ生きていけない。」

「そうなんですけど、ボクは人間がキライです。」

えっ!?俺ら嫌われてるの?

「ボクたちより強靭な肉体をもって、魔法なんて使えないくせに、意思の強さで、魔法でもどうにもならないことを平気で実現しちゃうんだ。この自治区の人たちがそうだし。」

「レグナ、それは嫌っているというよりも羨望に聞こえるな。」

レグナくんが答えに詰まる。

「それに、そんな君にも、心配してくれる友人がいるようだ。」

俺がここにいるの、ばれてる!?

「友人とよく話してみるといい。ではな。」

偉い天使は、俺とすれ違うタイミングに
小声で

「レグナを頼みます。」

と言って
なにごともなかったかのように
足を使って広場へ戻っていった。