この自治区の偉い人は話が短い。

ウードロード侯爵にしろ
主賓のナターシャさんにしろ
話ベタというわけではないようなのだが
軽く話して歓談タイムになった。

レグナくんは色んな人に囲まれて
羽を触られたりしてる。

レグナくんの他にも天使が1人いたが
自治区の要職らしく
軽い気持ちでは近づけないという理由もあって
レグナくんに人が殺到するに至る。

俺は

若い人たちからは遠巻きにされ
年配のかたがたの挨拶を
うまいこと対応していった。

「ぽこさん!」

少し弾んだ声が聞こえたかと思うと

ナターシャさんと
その兄ウードロード侯爵が立っていた。

最敬礼をもって応じる。

ていうか、
改造軍服着てるけど俺って軍人枠なの?

「年配のかたにモテるようじゃのう。」

ナターシャさんにからかわれる。

「改めて、はじめまして。ナタがお世話になっています。そしてこれからもお世話になると思います。」

一応、通信所で面識はあるんだった…。
相手が偉い人だからって、別に俺は緊張しないけど。

「ぽこぽんです。」

「ぽこさんは、ボクのこの格好を見て何の感想もなしかね。」

ナターシャさんにつっこまれる。

ドレスだった。

そりゃ、時代が時代ならお姫様で
今は侯爵の妹なんだから
白い軍服とかで出てくるとは思ってなかったけど。

「大人っぽいドレスになりましたね。」

「まったく、女性の変化に気づかないうえノーコメントとはのぅ。」

うわ、ちょっと風向きが悪いな。

「勘弁してくださいよナターシャさん。」

さっさと降参するに限る。

頭が良い女性と口喧嘩なんかするもんじゃない。
完膚なきまでに打ちのめされて負けるから。

「ナタをぽこぽんさんの旅に同行させようと思います。お役に立てるかと思いますので。」

ウードロード侯爵から直々にご許可をいただいた。

「それと、これを。後程イルルさんの病室に届けさせますね。」

ウードロード侯爵が示したのは箱のようなものだった。

なんだろう…?

後で戻ってから見てみよう。

「ありがとうございます。」

丁重にお礼を言うと
侯爵兄妹は他の参加者に取り囲まれてしまった。

多分このパーティーじゃ
もう話せないだろうな…。



壁の置物に戻ろうとしたら
レグナくんがバルコニーに出るのが見えた。

俺は今度こそレグナくんを見失う前に追った。