「寛大すぎるな…。」

元王女の扱いとしては
大丈夫か?と問い詰めたくなる内容なんだけど。

「兄さんはボクの意志を尊重してくれるんだのぅ。」

「俺は大丈夫だから、ナタはナタにしかできない仕事しろよ。」

珍しくイルルが真面目なこと言った!

「勇者も替えが効かないけどナタも自治区の人々にとっては替えが効かないしな。」

ナターシャさんはイルルの頭を撫でると

「じゃ、行ってくるよ。準備とかもあるし。」

と言って
病室を出ていってしまった。

「僕たちからも何かプレゼントしたほうがいいんじゃないんですか?」

レグナくんがぽそりとつぶやいた。

「でも何ならナターシャが喜ぶんだ?」

リーヴェが頭を抱えている。
困っている人の見本のようなかっこうだ。

「ナタはだいたい何でも喜ぶからなぁ。」

イルルが遠い目をする。

イルルは眠りすぎて
おかしくなったのだろうか?
まともな言動が増えた気がする。

「ふむ。ここにいるのは織工技師と錬金術士と役立たずが1人か。」

「役立たずって明らかに僕のこと言ってますよね?」

イルルの棘がある言葉に
レグナくんが少しキレ気味だが
この2人の喧嘩も
毎回相手にしていたら身がもたない。

「俺ら普段着で旅に出ちまったから防具でも作ったほうがいいんじゃね。」

イルルが再度まともなことを言う。

「あー確かにねー。」

それに
イルルの服には
シュバルツバウム家の家紋が
刺繍されていて
どうにも動きづらいのは事実だ。

刺繍をしたツキヨさんには
悪気がないのはわかってるけどね…。