イルルがナターシャさんの誕生日を思い出した直後。

今まで様子を見ていたとしか思えないタイミングで扉がノックされた。

メイドさんが入ってくる。

40代くらいに見えるけど
服装が古典的なメイドさんなので
あまり違和感がない。

「メイドさんだメイドさんだメイ…ふぎゅ。」

イルルが大ハッスルしかけたが
レグナくんに手で口を塞がれて
黙った。

むーむー言ってるけど
スルーするしかない。

「ナタ姫様、明日はナタ姫様の生誕祭でございます。」

さっくりと用件から切り出すメイドさん。

「うむ、忘れておったがのぅ。」

「山賊が討伐されたことも兼ねて盛大にお祝いをすることになりました。」

「…嫌な悪寒しかしないのぅ。」

「自治区の代表みたいなもんだろ?公務なんじゃね?」

リーヴェがナターシャさんとメイドさんの会話に割り込んだ。

「さすがナタ姫様のご友人です、ナタ姫様のお立場をよくご理解していらっしゃいますね。」

これ幸いとリーヴェの発言に
そのまま乗っかるメイドさん。

「せっかくイルルが起きたのに。」

ナターシャさんはしょんぼりしてしまった。

「お兄様はこの宴に出たら暫くは危険な旅もお許しになるようです。」

それを言われると
勝手にナターシャさんを連れてきた俺たちは
黙るしかない。