俺はイルルの頭を撫でてみた。

イルルがもぞもぞと動く。

「もう少しで起きそうだな。」

ナターシャさんとレグナくんが
イルルの頭を撫でまわす。

「あんまりやるとまた深い眠りに、」

落ちるぞ、と言いたかったけど
遅かった。

何故か頭を撫でると
深い睡眠に落ちる生き物なのだ。

「生き物って…。一応人間ですよね?」

レグナくんのツッコミ。

「マザリモノだけどね。」

「ツキヨさんが治癒士だから、純血の人間じゃないねぇ。」

「そういえばイルルが魔法使ってるの見たことないな。」

「人間の血のほうが濃いのかもしれんのぅ。」

勝手にイルルのことを話していたら
イルルがもぞもぞと動き出した。

聞こえてるんじゃないのか?

ナターシャさんが
イルルのほっぺたを
ぺちぺちと叩く。

起きるのかと思ったが
イルルはさらに布団に潜り込んでしまった。

「あらあら。スーパーネボスケは簡単には起きないのぅ。」

ナターシャさんが呆れている。

レグナくんは
容赦なくイルルの布団を剥いだ。

「いつまでヒトサマに心配かければ気がすむんですかっ?!」

それでもまだ
体を丸めて眠ろうとするイルルの姿には
睡眠への執念すらうかがえる。

さすがに布団を剥ぎ取られて
寒かったのか
イルルが薄く目を開けた。

目には何も写していない。

ナターシャさんとレグナくんが
安心したのか
ぽろぽろと涙を流す。

イルルがはっきりと意識を取り戻したのは
それから30分後くらいだった。