勇者34歳

「さて、ナターシャさん。オレ達は山賊討伐の指揮官だが、イルルの救出も目標ではある。」

いきなりリーヴェがぺらぺらと
話し始めた。

「人質がいなければ手榴弾とかで殲滅できるが、イルルが捕まってる以上、爆薬系は使えない。」

「さすがに死んでしまったらボクも回復できないしね。」

死んでも生き返らせることができるなら
今俺が勇者をやってるわけがない。

「デルフさん、山賊の犯罪傾向は?」

リーヴェがデルフさんに話を振る。

「元々、食い詰めたヤツらの集まりってのもあるが、殺人の被害よりは金品の被害や鉱物の被害が深刻。」

道を踏み外した一般人達か。

「軍を出したくらいだ、シルティアとしては山賊は皆殺しにしても構わんらしい。」

「プラティナム自治区から献上された鉱山は国庫と国民の生活を潤しているからな。よほどの被害だと思われる。」

「お察しのとおり。」

リーヴェの考察をデルフさんが裏付ける。

「総攻撃の前にイルルを助け出せたらいいんだが…。」

リーヴェは考え込む。

「山賊が数人ってことはないと思うんだけど。」

正規軍を派遣したくらいだしな…。

「正規軍が寄越されたのは人数が多くなりすぎたのも理由だな〜。数十人なら警備隊で山狩りする程度だ。」

警備隊に山狩りさせるのか
正規軍で殲滅するのか
明確な閾値があるわけか。

「イルルを助け出すためにはどうしてもリスクがつきまとうね…。」

ナターシャさんが不安そうな顔をする。

「ナタさん、誰が補佐についてると思ってる?リーヴェ・マカロンですよ。」

リーヴェのくせになんか偉そうだな。

「シルティア北東部ではそれなりに有名だね〜。」

デルフさんが補足した。

マジかよ。
なんでそんなヤツが織工ギルドにいたのか
さっぱりわからない。

「世情が安定すればだいたい失職するしのぅ。」

「そっすね。」

リーヴェが
わざとらしくため息を吐いた。