勇者34歳

「イルルが…。」

「ふむ。今日ボク宛に届いた、イルル・シュバルツバウムさんの件かな。」

まさか
ウードロードさんから
イルルの名前が出てくるとは
思ってなかった。

「脅迫状だよ。イルル・シュバルツバウムを返してほしければ山賊討伐をやめろといった趣旨かな。」

イルルが山賊に捕まっているなんて
当たってほしくない予想だった。

「ナタが通信所から通信してくるってことは、大事な友達なんだね。」

「うん。」

「誰か、補佐してくれる人がいれば指揮をしてもいいんだけど。」

そんな心当たり、あるわけが…

「リーヴェ・マカロン。」

デルフさんがつぶやく。

「リーヴェ・マカロンではいかがです?」

「リーヴェ・マカロンって、あのリーヴェ?」

「あのリーヴェさんだよ。彼は北東部の軍師の弟子という経歴を持っていますが。」

ウードロードさんの映像が
何かを調べている様子になる。

「この人?」

ウードロードさんが写真を見せた。

ニヤニヤと
どうしようもなく緊張感がない表情で
写真に写っているのは
紛れもなくリーヴェだった。

「魔物討伐では実績を上げているし、いいんじゃないかな。」

「え、じゃあ…。」

「リーヴェ・マカロンは既に確保してるんだよね?」

ウードロードさんに聞かれて
3人で首を縦に振る。

「ナターシャを指揮官に命じる。補佐はリーヴェ・マカロン。」

ほんわりしていたウードロードさんが
真剣な表情で命じた。

「現場にも通達しておくよ。」

「ありがとう、兄様。」

「そんなに都合よく補佐できる人がいるなんて、巡り合わせがいいのかもしれないねぇ。」

ウードロードさんはほわほわと
そう言うと

「じゃあボクは現場への通達とかあるからこれで。ナタ、一度はちゃんと顔を見せに帰りなさい。」

「うん。」

ウードロードさんは
じゃあね、と言い姿を消した。

『通信終了。有難ウ御座イマシタ。』

機械の棒読み音声が聞こえて
バリアが弾け
金属製のシャッターは
天井に収納された。