勇者34歳

ナターシャさんが来たのは
通信所という施設だった。

「そういえば、王都にはなかったのぅ。」

ナターシャさんはそう言うと
受付でもらったカードの番号の部屋に入る。

「俺も?」

「3人はちょっと狭いけど仕方ないのぅ。」

俺とデルフさんも入ることになった。

『オ名前ハ?』

うわ、機械っぽいのがしゃべった。

「ナターシャ・ユメハ・プラーティーン・アタホーク」

多分フルネームなんだろうけど
おそろしく長い…。

『名前認証、声紋認証完了、機密通信扱イトシマス。』

天井から壁沿いに
金属製のシャッターが降りてきて
さらに
魔族と戦ったときに
レグナくんが張ってくれたバリアみたいなヤツに囲まれた。

『準備完了、通信相手ヲ指定シテクダサイ。』

負けてる。
シルティアはプラティナム自治区に
技術力で負けてるよ…。
どうあがいても勝てないくらい
完全無欠の負けだ。

「ウードロード・ライト・プラーティーン・アタホーク」

『オ待チクダサイ。』

待つこと5分。

『映像通信開始』

機械の声が部屋の中に響き
ナターシャさんにそっくりな男性が
立体映像で出された。

「久しぶりだね、ナタ。」

おっとりした声も気品もしゃべり方も
全部ナターシャさんにそっくりだ。

「兄様、久しぶりだのぅ。」

「他のお客人もいらっしゃるみたいだね。」

慌てて、ナターシャさんのお兄さんに挨拶する。

「ぽこぽんです。勇者です。」

「王都警備隊のデルフです。」

「ウードロードです。」

ウードロードさんは
にこやかに挨拶を返してくれた。

「ナターシャ、ハルシオンからってことは山賊の話かな?」

ウードロードさんはすぐ本題に入った。

「此度の山賊討伐の指揮をボクにとらせてほしい。」

「それは…きけないね。」

ウードロードさんはすまなそうな顔をする。

「ボクたち一族は争い事が苦手だ。ナターシャも、よくわかってるだろう?」

「でも兄様!」

「何か事情があるんだね。」

「…うん。」