だらだらしてたら夕方になり
ナターシャさんとレグナくんが
宿屋に戻ってきた。

「近々、東の山で大規模な山賊狩りがおこなわれるようでのぅ。」

ナターシャさんが部屋の壁から
剥がしたままの地図を広げて
説明してくれた。

「それを回避するならちょっと西寄りのラックスの町から南下してラニールの港へ行くといいかなぁ。」

「そうですね。」

レグナくんがナターシャさんに
同意する。

「運転はリーヴェさんに任せるがのぅ。」

俺はそもそも飛行車を運転できないし
多分方角もわからないし
そうなるんだろうな。

そういえば
イルルとリーヴェは帰ってこないな…。

なんだか不安になってきた。

2人が戻らないまま日付が変わる。

階段をのぼってくる足音が聞こえた。
だが、1人ぶんの足音だ。

階段の足音の主が部屋の扉を開ける。

「ぽこさん、起きてましたか。」

リーヴェだった。

「やっぱりイルルが戻ってない…。」

いつもニヤニヤしているリーヴェが
今はぐったりと疲れをにじませている。

「1回も戻ってないんすか?」

「戻ってないけど…。」

リーヴェは頭を抱えると
ぼそっと言った。

「イルルを、見失った。」

ちょこまかと動くイルルは
誰でも見失うと思うが。

「どこ探してもいねぇ。」

「「え?」」

ここまで言われて
俺たちはやっと
事態が深刻であることを
認識したのだった。