勇者34歳

アヌークさんの案内もあり
すんなりと宿屋に到着した。

レグナくんは宿屋の入口で待っていた。

5人でぞろぞろと部屋の中に入る。

「まさかこんなことになるとはのぅ。」

ナターシャさんは
優雅に紅茶を飲みながら
軽量級のため息をついた。

「すまんのぅイルル。隠していたつもりは無かったんじゃよ。」

イルルは
ちょっと可哀想なくらい
しょげていた。

「今は貴族の娘でただの治癒士だけど、何か聞きたいことはあるかのぅ?」

じゃあ遠慮なく。

「なんで肉屋とかやってたし。」

一番の疑問ってこれだろ。

「自治区の外に留学し、様々な産業や技術を持ち帰るのがボクの使命だったからのぅ。」

「それは、元王女がやるようなことなのか?」

リーヴェの言うことも一理ある。

「王女の肩書きはもう無いよ。」

「ここの侯爵はプラティナム自治区の民たちに絶大な人気を誇っているようですね。」

レグナくんが口をはさむ。

「小国故に、侯爵のご家族が各地を巡察し、現状を見て政治を行うので、ナターシャさんの顔も広く知られているのです。」

「そうしていたけども、何故それを知ってるのかね?」

レグナくんの顔から表情が無くなる。

「先代の勇者と、プラティナム自治区に来ましたので。」

なるほど。
先代の勇者が亡くなって
そんなに経っていないし
ここは光の神殿への通り道。

レグナくんの悲しみは
まだ癒えてないし
切なくなるのも当然か…。