勇者34歳

「とりあえず、宿にでも行こうかの。」

ナターシャさんが町に入っていく。

「ナタ姫様!おひとりで歩いてはなりません!先頭を歩くなどもってのほかです。」

衛兵が慌てる。

「エルク、私はナタ姫様を宿までご案内する。警備を頼むぞ。」

「はい。」

アヌークさん?は
もう1人いた若い衛兵にそう言って
ナターシャさんの前を歩き始める。

リーヴェはニヤニヤしているから
平常心に見えるが
イルルのほうがかなりショックを
受けたようだ。

町の中を歩いていると。

「あっ!ナタ姫様!」

「ホントだ、ナタ様だ!」

「お元気そうで何よりですわ。」

「ナターシャ様じゃ!ありがたやありがたや。」

「ナターシャ殿下だ!お変わりないようで何より。」

衛兵のアヌークさんみたいに
近寄っては来ないけど

町の人が
ナターシャさんを
すごくガン見してたり
ありがたがったりしている。

「ナターシャさん、あの衛兵さんがおしゃべりじゃなかったとしてもバレたんじゃないの?」

「むぅ、もう13年ほど自治区には戻っていなかったのだがのぅ。」



「何の騒ぎですか?」

空から声が降ってきた。
見上げると、天使が浮いている。

「レグナくん。」

「詳しい話は宿屋で落ち着いて話すから、レグナくんは先に行っててくれんかのぅ。」

「わかりました。」

レグナくんはあっさりそう言うと
ぱたぱたと飛び立っていった。