「無理です…。」

天使がぽそりと言った。

「先代のカタキ、討たなくていいのか?」

おっさん兵士が天使にきく。

「わたしたちにとって、勇者はあの子だけなんです。」

戦士が答えた。
ちょっと傷つくが、わからんでもない。

「今の勇者さんを否定するつもりはありません。でも、また勇者さんだけ亡くなって、わたしたちだけ生き延びてしまったら?」

「もうそんなのイヤだ!耐えられないよ!」

魔法使いが叫ぶ。

「死なせちゃいけないヒトを死なせちゃうのはもうイヤだ!僕たちにはもうその自信は、ないんだよ…。」

「配慮のないことを言った。すまない。」

おっさん兵士が3人組に謝ってた。

コイツらは、
未来のイルルかもしれない。
未来のリーヴェかもしれない。
未来のナターシャさんかもしれない。

コイツらがやってたこと。

先代の勇者の遺志を継いで、
ひとびとの生活を守ること。

どうしたらいい?
どうしたら彼女の遺志を継げる?

「無理に来いとは言わない。」

3人組が、守りたかったのは
先代の勇者で俺じゃない。

そして、俺も彼女の代わりにはなれない。

だったら。

「先代の勇者の遺志を継ぐんなら自警団とか始めたらどう?」

思い付いて言ってみた系だけど
悪くないかも?

「辺鄙なところは正規軍もあまり駐留してないからな。勇者さん、それは大アリですよ。」

「先代の勇者の遺志を継ぎたいんだろう?」

まだ3人組の目から涙が流れているけど
3人とも顔をあげて前を向いていた。

「それは、悪くないかもしれませんね。」
「そうしようよ。」
「うん。」

うまくまとまったかな〜、自信はないけど。

「見事な手腕ですな。恐れ入りました。」

おっさん兵士が寄ってくる。

「お世辞を言ってもなにも出ませんよ。」

3人組も俺に近づいてきた。
リーヴェはいつ鳥籠の魔法を解いたんだろう。

「勇者さん。」

俺ちょっとびびる。

「そこのサムライさんや、僧侶さん、魔法使いさんに、同じ思いはさせないでね。」

「そのつもりだよ。」

3人組は哀しげな笑顔で頷きあった。

「それでね、勇者さん。」

天使の少年が俺に話しかけてきた。
なんだろう?

「まだオトシドコロが見つかってないことがあるんだけど、どうしよう?」

天使の少年の指さす先には、
魔族を捕まえた鳥籠があった。