勇者34歳

俺が迷った時間は2〜3秒だったが
ナターシャさんの魔法はそれで完成した。

「光よ!」

ナターシャさんが放った光は
夜の闇を切り裂いて
真昼のように明るくなる。

闇に紛れて
魔族を狙撃しようと
銃を構えていた俺の姿まで
光に照らし出されてしまい
あまりおいしくない状況だ。

「あっ…オマエは!」

イルルが叫ぶ。

俺も
このイケメン魔族に見覚えがあるけど
あまり思い出したくない。

「お!探しとったんや、アンタをな!」

「デットレイトで市民兵に捕らわれたはずじゃ…!?」

「ワシは魔族や。簡単に捕まるとでも?」

このヤロウ脱獄したのか?

ここは鉱山じゃないから
作業用のロープだとか
ワイヤーだとか
都合よく転がってるわけもない。