勇者34歳

「あぁそうだ、ヒゲの兄さん。」

さっきのおっちゃんだ。

「勇者さんは時々農作業を手伝ってくれることもあるよ。」

ほほぅ。

「今は見当たらないけどねぇ。」

有益な情報だが…。
農作業をやってるところを
全部見て回るのか?
非現実的だな。

「ふむ、これは厳しいのぅ。」

ナターシャさんは立ち上がり

「偽勇者に繋がる情報はほぼゼロかな。どうするかぽこさんに任せるよ。」

「一旦宿に戻ろう。」

俺はナターシャさんにそう言って
宿へ向かって歩き始めたつもりだった。

しかし
宿に着いたのは夕方だった。

「ぽこさん、方向音痴だったのかね?」

失礼な。
この町、何も目印がないうえに
宿屋の看板すら出てないんだぞ!?

「ナターシャさんに言われたくない…。」

ナターシャさんもナターシャさんで
自信たっぷりの足取りで先導するが
ものの見事に間違っていた結果がこれだ。

情報収集において
俺とナターシャさんという組合せは
最悪だということが判明した。

…方向音痴が2人揃う的な意味で…。