勇者34歳

探しても探しても
勇者がどこにいるかを知る人はいなかった。

「どうしたものかの。困ったのぅ」

セリフの割に
ナターシャさんは困った顔をしてない。

「なんだ?勇者さん達に会いたいのか?」

町人に聞かれた。

「ええ、とっても。」

「今の時期、魔物は少なくないからそのうち会えると思うがねぇ。」

…そうなのか?

「そうそう、桜が咲く時期は結構魔物を見かけるよ。」

冬眠から起きてくるんだろうか。

魔物についての情報は手に入ったが
偽勇者についての具体的な情報は手に入らなかった。



「ボクは偽勇者を捕まえたくないんだよね。」

ぽつりとナターシャさんが言った。

「奇遇だな。俺もだ。」

「何も悪いことをしていないと思うんだけどね。」

ナターシャさんは
桜を眺めながらため息をついた。

俺も桜の木の下に座って
ぼけーっとしていた。

視界に…何か見覚えがある飛行車が映った。

俺たちがこの町に来たときに
使った飛行車と思うんだが。

「何やってるのかね、リーヴェさんは。」

ナターシャさんもそれを見つけたらしく
わけがわからないといった顔をして
飛行車を見ていた。

飛行車は村の外を
スピード狂もびっくりの速さで
走り去っていった。