勇者34歳

ナターシャさんと町外れを歩く。

「比較的、森に近いのはこのへんかのぅ。」

周りを見渡すと畑が多い。

農作業をしているおっちゃんに声をかけてみる。

「ちぃーっす!」

「旅人かね?こんにちは。」

おっちゃんの対応から察するに
この町は余所者にも寛容なようだ。

「このへんってモンスター出ますか?」

「結構出るねぇ。」

「それは強いヤツですか?」

「中型くらいかね。そんなに強くはないのかもしれないけど、素人には厳しいねぇ。」

「どうやって追い払ってるんですか?」

「ちょっと前から勇者さんたちが滞在してて、倒しに来てくれるんですよ。」

俺はそんなことした覚えがないな。
間違いなく偽物達の仕業…
…いや、功績だろう。

緋バンダナの下に隠された
勇者の印のアザが少しむず痒いが
それはこの際放置する。

「勇者さんたちはどこにいるんでしょう?」

おっちゃんは少し困った顔をして

「どこにいるかは知らないなぁ。ワシらが困ってるときに助けてくれれば言うこともないしなぁ。」

…おっしゃるとおりで。

偽勇者を目撃した情報は得たものの
どこにいるかまではわからなかった。