嘘吐きなその唇で




動揺を隠せない私は視線が泳ぐ。



「あ、他人に家を知られるの嫌か」



『いや、そういうわけじゃないんだけど……』



眉の両端を下げて雅哉を見上げれば、彼は苦笑いを浮かべていて……。



あー、弱った。



出来れば、やんわりと断りたい。



「灑良、夜道を一人で歩くのは危ない」



『いや、大丈夫――…』



「そうだね。女の子を一人にするのはいけない」



ドクリと高鳴る心臓。



その穏やかな物言いは、学校が終われば聞くことはないのに。