普段はバスで学校まで通っているのだが、
あいにく財布の中身は50円だった。
「おう、どーしたアバズレ」
理恵は背後から聞こえた声に振り返る。
そこには最も会いたくなかった人物が立っていた。
「北条 昴か」
「そういう態度がウゼェ...」
「何か用か?喧嘩を売りに来ただけじゃないだろうな」
「いやぁ~、傘忘れちゃったバカな女が居るらしいんで見物に......」
昴がニタっと笑いながら言う。
嫌味の念が精一杯に込められた笑顔だった。
「お前、傘持ってるのか?」
「もちろん」
「よこせ」
「嫌だね」
「いいから私に貸せ」
「嫌だっつーの。誰がオメーになんか貸すかよ」