理恵は片手をポンと昴の肩に置き、
俯いた顔をのぞき込みながら言う。


昴はそれに驚き、肩を小さく上下させ
声を荒げた。


周りを歩いていたサラリーマンや
学生もこちらに振り返る。




「な、何だお前かよ」

「あぁそうだ、私だよ」




理恵はため息混じりに言葉を返す。


昴は安堵のため息をついてから、
額の汗を拭った。


完全に動揺しているのが
それから伺えた。




「どうしたお前。なんか今日おかしいぞ」

「何でもねーよ。黙れアバズレ」

「誰がアバズレだよ」




理恵は内心、調子の戻った昴に
胸をなで下ろす。


しかし反面、足で思いっきり相手のスネを蹴飛ばした。