一瞬、昴の表情が強ばる。
「相合い傘とか言うんじゃねーよ、アホか!これは相合い傘じゃなくて一緒に肩を並べて帰ってやるだけだ。百歩譲って」
「百歩譲ってとは何だ。私が傘を忘れたから仕方なくお前を利用するだけだからな」
「偉そうにすんなっつーの!」
こんなやり取りがしばらく続き、
気が付けば辺りは真っ暗になっていた。
雨が降っているのかさえ見えない状態だったが、
雨が地面を打つ音が確認できる。
昇降口にある人影は二つ。
理恵と昴だ。
「ほら、お前のせいでもう真っ暗だ。どうしてくれる......」
理恵が黒く染まった空を見上げながら呟く。
昴は面倒くさそうに後ろ髪を掻きながら
折りたたみ傘を組み立てた。
「ほら行くぞアバズレ」
「誰がアバズレだ。黙れ童顔」
「誰が童顔だよ。死ねアバズレ」