昴は露骨に嫌そうな顔をしながら言い返す。
片手には青色の折りたたみ傘が握られていた。
それを見せびらかすように、
昴は執拗に傘を動かす。
「喧嘩売りに来ただけか」
「いやいや。まぁ頼み方次第によっちゃ、考えてもいいかなァ~」
「頼み方次第?」
理恵が顔をしかめながら問う。
昴は意地悪げな童顔を理恵に向け、
ゲームのルールを教えるかのように話し始めた。
「やっぱ、人に頼むときの態度ってのもあると思うわけよ」
「そりゃそうだろ」
「だから、傘貸してほしけりゃ相応の態度でオレに話せって事」
「はぁ?」と間の抜けた声を出す理恵。
しかし雨は一考に止む気配がない。
それに走って帰ったとしても、
風邪を引くのは免れないだろう。