廊下に出る際、ちらっと彼の顔を見た。
迷いながらも覚悟を決めた顔だ。
もう、彼に言うことは何もない。
安心して帰れるわ。
途中、ひとりの女子生徒とすれ違い、少しして。
「日置咲良です、手紙を読んでくれたんですね」
という女の声。
…………早急に帰った方がよさそうだ。
* * *
週が明け、今日もまた、ひとりホームで電車を待つ。
暇潰しにいじるスマホで、昨日送られてきたメールを見る。
口角が上がるのが分かった。
『何があっても、うちは彩希の味方だからね!』
そんなありきたりなメールで元気付けられている。
お陰で、彼がいなくてもなんとかやっていけそう。
カンカンと、遮断機の降りる音が聞こえる。
スマホをポケットにしまい、目の前に滑り込んできた電車に乗り込む。
そこで、予想していなかったものを目に留めた。