「怖かったんだ、あの空気が壊れてしまうんじゃないかって。だから僕は、あの電車から逃げた」
「憶測だけで人を判断するなんて、愚かなことを……。彼女に失礼です」
「わかってるさ! でも、どうしょうもないんだ。変わってしまうことが、おそろしい………」
彼の気持ちは分からないでもない。
同じような体験をした人を何度も見てきたから。
私はそんなことないけど、想像はできる。
「彼女のこと、気に入ってたんですね。でも、いざとなると、勇気が出ない」
「別に、気に入ってる訳では……」
「まあ、その辺は後でじっくり考えてもらうとして」
「僕の意見無視?」
「とりあえず、彼女は朝、貴方の姿を見れないだけで結構参ってるようなので、週明けにでも会ってあげてください」
「僕の話聞いてた?」
「はい。だから、けじめをつけろと申しているのですよ」
では、それだけですので。
踵を返し、歩を進める。


