返事に困って、あさっての方を向いていると、彼は話題を変えた。
「何の用かな、告白なら聞き飽きたんだけど」
「皆が皆、あんたに惚れると思わないでください」
思わず口をついて出た。
難波様、もとい、某アイドルグループのインテリキャラ似のイケメンは、少々思い上がったお方のようです。
彼は、目を丸くしていたが、すぐに無表情に戻る。
「だったら、用は何なの?」
「……あなたは、2週間ほど前まで、上り車線で通学していましたよね」
「………それが何か」
「どうして、辞めてしまったんですか」
「君には関係のないことだよね」
難波様は、もう話は終わりとばかりに立ち上がった。
「どんな理由があるのか、教えてください。私はそれを訊きに来たんです」
私は道を塞ぐようにして立つ。
眉をひそめるも、彼は私を押しのけることはしなかった。
「気分だよ。もういいかな」
「いいえ、私の目を見て言ってください。S高の女子生徒が原因じゃないんですか」
あからさまに目を逸らしたことを指摘し、影山彩希のことを言えば、彼の肩は大きく跳ねた。
やっぱり、あのタイミングで電車を替えたのは偶然じゃなかった。
難波様は、はあーと息を吐いて、近くの机に力なく座る。
「…………あっちには、おばあちゃんの家があるんだ」
そして、ぽつぽつと犯罪者が自白するように話してくれた。


