「そういうわけだから、あたしたちでモデル並のイケメンの弱味を握ってきます!」
「安心してください、ファンクラブの名に懸けて、学園トップの座は渡しませんよ!」
声と同時に足音が近付いてきて。
まずい!
戸から耳を離した瞬間、引き戸が目の前に滑り込んできた。
あぶなっ、頬かすったぁっ!
教室から出てきた女生徒二人がこちらに目もくれず、廊下を走って何処かへ行った。
「はぁ……僕のことを思うなら、放っといてくれたらいいのに」
憂える美声に色気を感じる。
おそらく、この人が難波様ですね。
先ほどの会話からして、人気のある方と見受けられます。
ポケットから手鏡を取りだして、教室の中を覗く。
……………あ。
ばちんと鏡越しに目が合った。
「入ってきなよ」
逃げる間もなく言われ、私はしぶしぶ彼の前に出る。
「えーっと、君が僕に手紙をくれた日置咲良(ひおきさくら)さん?」
………誰のことでしょうか。


