あんな奴、こっちからお断りですよ。
さて、ターゲットはどこかなー。
浪瀬と鉢合わせしない道を選んで通る。
今の彼はとても分かりやすい。
なんたって………。
「キャー! こっち向いてぇ!」
「投げキッスして!」
「バーン! して!」
甲高い声が前方から聞こえてきたので、踵を返す。
何処のアイドルのコンサートかっ、てセリフが浪瀬の周りを飛び交っているのだから。
それに浪瀬もいちいち応えてるようで、そのたびにキャーキャー五月蝿い。
あいつの耳はよくこんな声に耐えられるな、頭が痛いわ……。
静かな方に、静かな方にと導かれるように歩いていく。
「なんか今、モデル並のイケメンがこの学校にいるらしいけど、あたしは断然難波(なんば)様派だからね!」
「そうよ! 浮気なんて、難波様ファンクラブの恥だわ! みんな追放よ!」
「………」
「ああん! ライバルが現れても動じないクールな難波様素敵です」
すぐ近くの教室から、そんな会話が聞こえてきた。
……野次馬根性に火がついた。
不審者よろしく、その教室の戸に耳をつける。
その後、女の方がいかに難波様が素晴らしいか語り続ける。
男の美声がそれに適当に相槌をうっていた。


