* * *
そして土曜日。
浪瀬の宣言通り、進学校の制服を着て校内にいた。
計画通り、浪瀬は女子生徒の視線を独り占め。
彼の隣を歩く私は、飛び火した嫉妬の視線を一身に浴びていた。
痛い痛い、グサグサくるよ。
普段人の目に晒されない我が身には針の狢。
どうしてこうなったか。
原因は全て浪瀬にある。
彼の兄姉がこの進学校の出身らしく、制服を持っていた。
それを拝借して正面から校内に堂々と入って来たのだよ。
制服のお陰か、不審者を見る目で見られることはなかった。
が、自称イケメン浪瀬忍が歩くたびにハートな視線の数を増やし、今に至る。
こんなことなら、一人でこっそりと入るべきだった。
……制服を貸していただけた事には礼を言おう。
ただ、感謝するのはそこだけだ。
「おい」
チャラ男5割増しの浪瀬に見下ろされる。
「お前さっきから邪魔なんだよ。どっか行け」
そう言ったきり、一人ですたすた歩き出した。
沢山の女子生徒を引き連れて………。
去り際に、女子生徒共の嘲笑うような視線を受けて、イラッときた。
あっちから誘っておいて、置き去りですか!


