「はっ、女が尽きた事のない俺様に言うセリフか、それは」




鼻で笑われました。




返す言葉もありません。




きっと彼は、そこらの一般人みたいな性格勝負なんてやった事が無いのでしょう。



すべては顔ですから。


顔だけはいいですから。


むしろ、顔しか取柄がありませんから。




「…………絶対、誰にも話さないと約束してほしい」



「おう」



初めからおとなしく話せば良かったものを、といったような偉そうな顔がムカつきます。




「彼女の名前は―――」




私の声と被って予鈴が鳴った。



「は? うそだろ」




でも、浪瀬の耳には届いたようだ。



荷物を持って立ち上がり、低い位置にいる彼を見下ろす。





「だから、しゃべるなよ」




今一度念押しして、校舎に入る人の波に紛れた。






 * * *






翌朝。




登校すると、昨日の浪瀬との会話であがった彼とすれ違った。



その後、少し空けて浪瀬とすれ違う。



私は特に気に留めてはいなかったのだけれど。