私の一人称は俺様じゃありませんからね。

貴様とは違って、謙虚なのです。


っと、本題とずれてきている。


頭を掻いて、ひと呼吸。



「私が貴様を呼び出したのは、私が俺様デビューしたって報告じゃなくてですね」



いやデビューしてないですけど。



「ああ、神様やめるって話か」



「わかってんじゃん」



わかっててこいつ。


怒りを抑えるように、拳をさらに固める。



「あー。神様辞めるから手伝えって話に異論はない。お前の選んだことだ。俺様が口出すことじゃないからな」



「……話のわかるお人で助かったよ」



初めから物分かりがよくあってくれれば、私の手のひらに爪痕はつかなかったんですがね。



「だけどよ。神様辞めたからって、俺との関係までやめるなんて、面白くもない冗談だな」



「神様は廃業。だったら、協力者である貴様も同時に廃業でしょ?なにか間違ったこと言ってますか?」



「俺様がはじめて野枝に会った時、お前は神様じゃなくて、ただの野次馬だったんだ」



神様だったよ。

野次馬名乗ったけど。

野次馬で間違いなかったけど。



「今更、神様辞めますつっても、俺様に害はない」



「あっそ」



「要は、俺とお前の関係まで変わらないってことだ。……気持ちもな」



「気持ち?」



何言ってんだこの男は。


ニヒルに笑う彼に、本気で首を傾げていると。



「忘れたのかよ!俺様の一世一代の告白を!」



怒鳴られた。



「貴様の告白なんて知ったこっちゃないんですけど」



「お前はいつもそうだ。この神が作り給うた最高傑作である俺様を蔑ろにしやがる」



「人間は皆、神の子であるぞ。すべて等しく最高傑作なり」



「その中でも、俺様の美貌はピカイチだろう?」



「ビジュアルはよくても、性格がこれじゃあ、器も霞むってもんよ」



あ、褒めてるわけじゃないのよ。

顔がいいのは認める他ないけども。

性格が悪ければ顔も歪んでくるって言うでしょう。



「内面からにじみ出る美しさってもんが、平凡な外見をも輝かせるのです」



「だがな。所詮は顔だろ」



「中身も大事よ」



「1番はカネだろうけど」



「身も蓋もない……」



人間、まずは外見。

外面が良ければ良いほど良いのです。

それから中身を知る。

好感度の上げ方はそれぞれ。

それでも太刀打ちできなかった場合。



「カネは、ブサイクに与えられた最後の砦なのかもしれない………」



「俺様なら、顔、性格、金、揃ってるぜ」



「優良物件アピールかい?何度も言いますが、貴様の性格がいいなんて、天地がひっくり返るくらいでないとありえない」



「失礼だな。俺様キャラは女子に絶大な人気を誇っているというデータが…」



「それはあくまでも2次元の話でしょうよ。受けは良くてもファン止まり。現実でなんて、隣歩くだけでも恥ずかしいわ」



「アイドルでも俺様が…」



「テレビの向こうは総じて2次元なり。いい加減分かりたまえよ」



「なんのキャラだよ。何を分かれってんだよ………!」



「んー、フィーリング?」



「フィーリング……?」



「なにかを感じ取ってくれたまえよ」



「ざっけんな!」



だってねぇ、定義とか分かりかねますし。

こう、感覚でなんとなく察していただけるとありがたい。



「とにかく、俺は諦めないからな!」



「ここまで言ってんだから、諦めるでしょ、普通」



「諦めねぇよ」



「………はぁ。……………私があなたに振り向くことはなくても?」



「俺が勝手に好きなだけだ。きっと、振り向かせてみせる」



「結構な自信をお持ちのようで」



自信家で強引なところがある彼。

ここは引いてくれそうもない。


暫く睨み合っていたが、根負けしたのは私の方。



「………好きにすれば?」



「そうする!」



渋々了承するため息まじりの返事に、浪瀬は無邪気に喜んだ。