トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐







私達は音を抑えて走り、岡田夢菜の後方につく。


彼女はちょうどゴミ集積所の前にいて、大きく息を吸い込み、止めた。


横開きシャッターの戸を引き、傍に置いていたゴミ袋をその奥に引きずり込む。


その隙に、私と浪瀬は距離を縮めた。



そこは、一般教室の半分くらいの広さがある小屋。


校内のゴミ全てがここに集められる。


窓も電気も設置されていないため、臭い、暗い、汚いの3Kが揃っていて、燃やすゴミの置き場所は一番奥。


月1で収集されるこれらは、最後の週となった今、積み重なって山をなしている。


ゴミ集積所なら当然のことでしょうけど。


彼女は息を止めたまま、足早に一番奥へ。


両手の燃やすゴミを指定の場所に置いたところで、唯一の光源を遮る影。


忍び寄った浪瀬が、おおきく開いた出入口を塞ぐようにして立ち、声をかけた。



「1人でやってるの?」



肩を跳ねさせ振り向いた岡田夢菜は、身を固くする。


浪瀬が人の良い笑みを向け。



「大変だね」



優しい声をかけても。



「別に。いつものことだから……」



彼女は警戒を解かない。

逆光で悪人顔に見えるのだきっと。

いじめられっ子の王道、個室に閉じ込められる。

そんな経験があったのでしょう。


でも、戦う意志まで捨ててはいない。


地に足つけて浪瀬を睨み、独りでも立ち向かう様。


あわよくば、一泡食わせてやるとでも言いたげですが。


岡田夢菜は、そんなに気の強い子だったでしょうか。



「……………そんな顔していつものことって言うんだな」



浪瀬も同じところに引っかかったようだ。


人は簡単に変わらない。


長年染み付いた性格は特に。



「………」



岡田夢菜は睨みつけるだけで、答えてはくれなかった。


何か、きっかけでもあったのか。


それともただの強がりか。


もしかすると、一見優男な浪瀬になら勝てると思ったのかもしれない。


相手が違えば強気に出れることって、ありますよね。



「俺には、君を脅す気は無いよ。ちょっと話しをしたいだけ」



「だったら、ここから出してくれませんか?臭いが服に移りそうなので」



「これは失礼。じゃあ、続きはあそこのベンチで」



浪瀬が指したのは、校舎の壁に張り付けるように設置されたベンチ。


私はそこに音もなく走って、壁の死角に身を隠す。



それを待ってから浪瀬は道をあけ、岡田夢菜が逃げ出さないよう此処までエスコートした。