トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐




「まあいい。誤解も解けたようだし、俺様の調査結果、心して聞け」



誤解は解けたとしても、警戒は強まりましたけどね。


さて。

私が手にしている情報は、漏洩に気付かされた時に聞いたものだけ。



『平井さんが伊藤君を好き』


『相談して翌朝。登校してすぐ、クラスメートの前で公開処刑』


のみ。


さて、浪瀬が一晩でどんな結論に辿り着いたか、お手並み拝見。



「漏洩発覚は、岡田夢菜の好きな人は大逸だと、教室で平井美友が大声で言った事からだ」



初めて聞く名前で、私が対応した案件ではない。



「放課後に相談して、翌朝にバラされたんだと」



公開処刑があったことは知っていた。

それが、この人たちで、始まりだったんだ。



「それからしばらくして噂になったのが、平井美友が伊藤翔平を好き。と言っても、この噂の大半は、平井と伊藤より、また神様が口を滑らせた。だったらしい」



2度目の漏洩だもの。


内容より、漏洩した事実の方に重点を置く気持ちはわかる。

それに、誰が誰を好きなんて他人事、ほとんどの人は興味ない。

だから浪瀬の言う始まりも、岡田夢菜と大逸の名は広まらず、公開処刑された事柄だけが残されたのだ。



「平井と伊藤の場合は、自分から話していたから、こっちの名前は残っていたんだろう」



平井さんのことは知らないが。


伊藤は友人らに、平井に好かれている自慢でもしているようだった。


あんなおおっぴらに話していれば、自然と人の耳に入る。


かく言う私もそのひとり。



「……………あいつは、人前でバラした事への報復って言ってたな」



浪瀬がぼそりとこぼしたそれは、追及する前に過去の事。


声量を戻し、続きを語る。



「不思議なのが、この2つ以外に、トイレの神様が広めたって話が無いんだよ」



あんなに騒がれてて、漏洩は2つ?

んなあほな。



「貴様の調べ方が悪いんじゃないの?」



「テメエの調査結果を見直して、もう一度言ってみな」



「聞き込みは専門外なの」



「クッソ、開きなおりやがって!」



「さっき、俺に任せろって言ったばかりだよね!」



舌の根も乾かぬうちにこいつは。



「まぁ、漏洩事件は2つしかないってのが本当なら、尾ひれが大量についたものだわ」



「だから、2つしかないんだよ……!」



トイレの神様が広めてないってことは、残りの漏洩の噂は、当人達が口を割ったといったところか。


いや、たった2つでも、不祥事は不祥事。

情報漏洩は数の問題じゃない。

大きな騒ぎにもなる、か。


中でも内容が広まっているその2つは、たまたまなのか、それとも………。