トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



「協力ってのは、力を合わせて事にあたることだ。野枝が勝負してんのは、俺様じゃねぇ。その辺間違えんな」



「だからって、何もできてない事に変わり無い!」



「今までたくさん解決してきたお前の、どこができてないって?」



今までがなんだっていうのよ。



「現に今、偽者の手がかりつかめない!」



過去の栄光に縋ってどうする。

重要なのは、常に今。



「俺様は、聞き込みが得意だ。だから、任せておけばいい」



こいつ、私が聞き込み調査が苦手な事、気づいてたんだ。


とうの昔に、弱みを握られていた。



内心舌打ちが漏れる。



「代わりに俺様は盗み聞きは苦手なんだよ。野枝が盗み聞きてきたことを、俺が正しいものか見極める。互いに無いものを補い合う俺たち、いいパートナーになれるんじゃねぇか?」



いいパートナーですって?


補い合うとかさー。



「……………ははっ……。言ってくれるじゃない」



なーんか良い感じにまとめてくれちゃってさ。


天を仰げば、乾いた笑いがこぼれる。


あまりにもあほらしすぎて。


私は浪瀬相手に、くだらない競争心を抱いていたようだ。



「何たって俺様は本物のトイレの神様の協力者だからな!」



どやぁと威張る浪瀬。


そうだった。

浪瀬が私の敵として立ちはだかった事など…………ほんのはじめの頃にあったわね。


ま、でも。



「………ごめん。これからも、よろしくお願いします」



今では、協力者として頑張ってくれているから。


おずおずと出した手に、浪瀬が迷わず指を絡ませる。



「おうよ!」



そのまま絡んだ手を、彼が口元に寄せるのだから慌てて引き抜いた。



「そこまでよろしくしてない!」



狙いは賞賛か敬愛か。

はたまた欲望、懇願、恋慕か。



「ケチ」



言い方子供か。


なにも考えてなさそうなイケメン浪瀬のふくれつらを見てると、キスの意味を気にした私がバカみたいだわ。


っと、危ない、騙されるところだった。


そうやって女の子達を騙してきたんだもんね。