遠くがやけに騒がしくて、まどろむ意識を叩き起こされた。
「おはよ」
正面では、寝転んだままの浪瀬が爽やかに微笑んでいる。
「……おはよう」
もしかしなくても、ずっと私の寝顔を見てたのか。
はずかし。
起こしてくれたらよかったのに。
「…………」
「…………」
何も言わずにニコニコしている彼が恐ろしい。
私は何かやらかしてしまったのでしょうか………。
空気を変えようと、たいして興味のない話しを振ってみた。
「外、賑やかだね。祭りでもあるの?」
「どうせ、近所のババアの井戸端会議だろ」
まあ、そんなところでしょうね。
にしては、ただならぬ雰囲気ではあるが。
かなり近い所で、ハンドベルが短い曲を奏でた。
朝から騒がしいな!
「どこで鳴ってるの?」
壁にかかった時計を確認すると、11時8分。
時計の定期演奏会にしては、微妙な時間だ。
スマホはすぐ側にあり、おとなしいものであり。
「うちのインターホン」
「金持ちめ」
さらっと言う浪瀬に軽く殺意が。
一般家庭のインターホンは『ピンポーン』が主流というのに。
再びハンドベルが来客を知らせる。
くそっ、オシャレだなあ。
「ちょっと出てくる」
浪瀬はベッドを抜け出し、スウェットのまま部屋を出た。
彼の姿が壁に消え、足音が階段を降り玄関の戸を開けるまでを聞き届ける。
残された私は、夜中撮った戦利品を見返そうとカメラの電源を入れた。
「はい、何の用でしょう」
下からまず聞こえてきたのは、爽やか好青年の声。
これ、浪瀬だよね。
いつもの傲慢で性格の悪いあいつはどこに消えた。
ご近所でも猫かぶり浪瀬は健在ですか。
近所のババアと言った彼の姿を見せてやりたいわ。
みなさんのアイドル浪瀬忍は、理想の息子じゃありませんよー。
心の中で、声を大にして叫ぶ。
ご近所さんへ届け、テレパシー。
「こんにちは」
来訪者のものであろうその声は、ハキハキした若い男性のもの。
訪問販売や、保険勧誘の営業かしらね。
ま、私には関係ないわ。
うつ伏せでカメラの戦利品を順に見ていく。
黒いつなぎとキャップの3人組。
何度目かのダンボール搬入時の写真で、気付いたことがある。
………彼、視線がこちらにないか?
「警察です。少しお話しを聞かせてもらえるかな」
来訪者の名乗りに、ギクリと肩が跳ねた。


