窓横の壁に身を隠し、ポテトチップスを食す。
静かな夜に、軽快なリズムを刻んだ。
「なあ。俺たち何やってんだ?」
掛け布団に包まった浪瀬が、パック牛乳のストローを咥えて問うてきた。
何を今更なことをこいつは……。
「張り込みって言ったでしょ」
「張り込みったって、何も起きねぇよ」
文句一言。
彼はあんぱんをかじった。
「張り込みとは自分との勝負。そう簡単にスクープが撮れると思うなかれ」
「ただの隣が何するってんだよ」
「黙って見てなさいよ。何もなさそうな所から出てくるからスクープなのです」
言って、浪瀬父のカメラを構えた。
視界良好、いつでも撮れますよ。
「はぁ………。火のないところに火炎瓶ぶん投げるような真似を……」
「火種があるから点けてあげたまでです」
ワタシ、優しいでしょ。
野次馬ですから、あることだけを広めまショウ。
「簡単にスクープは撮れないんだろ。今晩しかないのに、無駄じゃね?」
「そう言いながら、浪瀬もノリノリではないですか。その、あんぱんと牛乳」
「これは………食べたい気分だったんだよ!」
浪瀬は居心地悪そうに、残りのあんぱんを牛乳で流し込んだ。
恥ずかしがらなくてもいいのに。
「ちなみに、何を撮るつもりだ?」
「そうねぇ…………。無難に浮気調査あたりを狙いますか」
「ああ。金持ち特有のあれな」
「そう。あれあれ」
仕事ばかりの夫。
妻は寂しくて男を連れ込む。
「夫は新人社員とデキてて、妻は夫の秘書とデキてる的なあれな」
「そうくるか」
浪瀬よ、昼ドラの見過ぎだ。
いや、深夜ドラマか。
「新入社員の中でも、ゆるい子が一番のお気に入りで、次に美人、可愛い子、クールな子と続く」
「夫どんだけ?」
「妻は第1秘書のストイック眼鏡を筆頭に、第2秘書の爽やか青年、秘書見習いのウブな子までを股にかける」
「……この夫婦なにやってんの?」
いや、不倫してるって事はわかるよ。
でもさ、夫婦そろって、ほにゃらら股祭り。
さすが浪瀬サマは考えることが違うわぁ。
それから暫くして、会話が途絶えた。
カメラを覗いたまま、てきとうな位置に拳を叩き込む。
「ぐはっ!」
手応えあり、浪瀬が呻いた。
「寝かせないって言ったよね」
「寝てない!俺様には、野枝を監視する義務があるから、な…………」
「んな昔の話を……。てか、まだ俺様浪瀬様続けてたの?」
今日は聞かなかったからてっきりやめたのかと。
「……………ぐぅ」
「…………………」
拳を握り、構える。
そして彼の無防備な鳩尾めがけて突き出した。


