「それは兄貴が置いてったもので……」
「はいはい」
言い訳しだしたので適当に流す。
エロ本くらい、なんとも思わないのに。
むしろ健全な男子高校生として、一冊も持ってない方が不自然という偏見がありますから。
「今は野枝一筋だ!」
「あーあー空耳がー」
両手で耳を塞ぎ、聞かなかったことにするよ。
同じ言葉をなんども何度も。
いい加減聞き飽きましたし、言い飽きたでしょう。
いつまでも聞いてないフリなんてしませんからね。
「それよか、歩き疲れたのよ。近くに温泉とかないかな?」
「いちばん近いので、3駅先だな」
駅までに徒歩20分ということを考えると、気が乗らない。
「却下」
「聞いといてそれはねぇわ」
「遠いもんは遠い」
「風呂ならうちのを使えばいい。脚を伸ばすくらいの広さはある」
「さすが金持ちハウスはお広いわね」
「まだ言うか」
「いいえー。ありがたーく使いますわ」
風呂の問題は解決した。
そこで次の問題。
「下着がない………」
下着だけでなく、寝間着もないのだ。
明日の服は、今日買ってもらった。
ああ、だから若い女の子向けの服を買いに行こうとしてたんだ。
こうなることがわかってたから。
だったら、下着も買いに行かせろ。
……………済んだことは仕方ない。
「1日くらい妥協するかな」
「俺のを貸すぜ。新しいのがある」
彼に胡乱な目を向ける。
「ブリーフ?」
「トランクス」
「乗った。今度買って返すわ」
「そのまま返してくれてもいいんだぜ」
「冗談もほどほどに」
キャラ崩壊が著しいのよ。
「一晩中野枝といられると思うと、浮かれちまって」
「初めて友達が泊まりに来た小学生か」
「言い得て妙だな」
「小学生が」
「そこじゃない」
浪瀬に、袋に入ったままのトランクスと、スウェットを渡された。
「パジャマ代わりにそれ着な」
「ありがと」
「風呂はこっち」
案内されるままに階段を下り、奥の部屋に通された。
洗面台と洗濯機がある、脱衣所のようだ。
「あるものは好きに使ってくれ」
「ありがと」
「……………」
「……なに?」
目で語りかけられてもわからないよ。
「期待していいんだな」
「なんの話?」
「一緒に入っ…」
「らないからね」
「お背中お流し…」
「いたしません!」
「せめて扉越しに話しを…」
「くどい!」
「しゃぁねぇ。野枝のドライヤーは俺がする」
「………いいでしょう」
他のものに比べたら、髪くらいお安い御用。
落とし所を見つけて、浪瀬を廊下に押し出し鍵をかける。
さすが、金持ちハウスは、こんなとこにも鍵がある。
もちろん喜んで使います。


