トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐





お互い皿を空にしたところで、浪瀬から提案がある。



「次は服でも見に行くか」


「はいはいお供しますよー」



こちとら母親を懐柔されてんだ。

早くに帰れるわけがない。



帰ったら帰ったで追及されそうだし、何か話のネタをもらわねば。



私がカバンを持って立ち上がると、浪瀬は会計に行っていた。

お釣りをもらい、振り向きざまに。



「野枝のぶんも払っといたから」



とか言いやがりました。

支払いの終えたレジに用はなく。

彼の後ろについてファミレスを出て、隣に並び、歩く。



「それ、いつ請求されるのかなぁ?」



浪瀬との貸借勘定は慎重にせねばならない。


何を要求されるかわかったもんじゃないから。



「いらねぇよ。んなことしたら、金で野枝を買ったみたいじゃねぇか」



「現物支給かい!」



私はてっきり現金を要求されるもんだと思ってたんだけどね。

むしろ現金で要求されることを期待してたんだけどなー。



「お金を払います。電車と映画とパフェ代」


「受けとらねぇよ」


「受け取りなよ」


「デートってのは男が全額もつものだろ」


「今まで女に貢がせてたやつが言う台詞?」


「本命は別だ」



ちっとも嬉しくない。



「金の切れ目が縁の切れ目。綺麗に会計しようぜ」



ニカッと歯を見せて親指を立てると。



「そーかそーか。野枝はこんなにも、俺との縁を大事にしたいんだな」


「前言撤回。全額奢れ」



ニヤニヤすんなし。


考えてみれば、連れまわされているのにお金払うなんて馬鹿らしいわ。

被害者なんだから貰わにゃ損よ。



「そうと決まれば次行くぞ」



金で買われた私は、浪瀬との恋人つなぎを甘んじて受け入れた。




そしてお馴染み、ショッピングモール。

その若い女の子向け洋服売り場に連れてこられた。



「着るの?」



買いたいけど抵抗があるから、私を連れて来た的な。



「野枝にプレゼントだよ」


「ありがとよ」



普通の理由でなんかがっかりだよ。






数分後。



「これ野枝に似合いそう。おっ、こっちもいいな」



私は浪瀬の着せ替え人形と化していた。


次から次へと持ってくるものだから、更衣室から出られない。


他に客がいないから、店員も注意しないし。



脱いでは着て、披露して。

脱いでは着て、疲労して。



興味のない長い買い物に付き合わされる彼氏の気分だよ。


だったらあの、活き活きと可愛い服を選ぶモジャ男は私の彼女ってか。



男ってだけでもあれなのに、ボサボサ浪瀬はそのなりのせいで悪目立ちしている。

せめてもう少し髪を整えてくれたら……。

イケメン浪瀬のがよっぽど目立つか。



「よし、これとこれだな」



何着試したか忘れたけど、ようやく買うものが決まったらしい。

嬉々としてレジに持って行った。



ねぇ、この隙に帰ってもいいかな?