トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐




まずは1人目。




机の上には平坦に物が広がっているが、正面の本棚はファイリングされている。


背表紙がつけられているそれは、私の求めているものはなさそうなので、除外。


広がった物は、レジュメだけだった。


足元の引き出しを下から開いていく。


ファイリングされた資料や、教科書しかなかった。





見切りをつけて、2人目。



ここはよく整理されている。


ペンはペン立て、本は本棚に。


次の授業で使うのだろうプリント類は、ファイルに仕舞って本棚に。


目につくところに目的のものはなさそうで、引き出しを開ける。


色鮮やかな箱がお目見えした。


真っ赤な箱のチョコレートや、オーストラリアにいる熊がプリントされたビスケットコーティングのチョコレート。


アーモンドチョコレートに、チョココーティングされた棒型スナック菓子など。


多種多様なチョコレートの宝物庫。


上の引き出しも同様だった。




次にいこう。




2人目終えた時点で、残り18分。



3人目は、浪瀬が今足止めしてくれている教師の机。




少し離れたその机の前に立つ。




…………思わず固まってしまった。




ひとことで言うなれば、バベルの塔。


座高より高く積み上げられた本類は、全て生徒のワークやプリント。


それが高さ違いで6本。




欲しい情報への期待が高まるが、どんだけ仕事溜め込んでんですか。



テスト前なんだから、返しなさいよ、勉強できないじゃない。



この時期、普通に考えて、生徒直筆のものは此処に集まりにくい。




でも、今しかチャンスは無かったから来た。


なので、ありがたく探らせてもらいますけど。




ワーク類の陰に、色とりどりの化粧品が整列している。


これで隠しているつもりか。


あの女、何しに学校来てんのかしら。


まあいいわ。




中央だけにポカリと空いた空間へ、見れたものから移し替えていく。


同じ塔のくせに、本と紙が混在していて。


人様のものを無下に扱うとはなんたることか。



所々シワが寄って破れているものもある。


これを、返却するつもりなのかあの女………。




顔をしかめながらも、私は任務をこなすのみ。



塔の下まで見れたら、元の位置に積み直す。



その際、元のようにグシャッと積むのが正解なのでしょうが、なんだか申し訳なくて、気持ち整えて積んだ。



繰り返すこと5塔目も終わりに差し掛かった頃。



ゲシュタルト崩壊を起こしそうな目をこすり、ノートに書き殴られたような文字を目でなぞる。





………見つけた。



これは、空色の手紙の独特なそれと同じもの。


念のため、依頼者から預かった原本と照合する。





うん、ヒヨコさんに間違いない。


羽鳥空(はとりそら)。


それが、空色のヒヨコさんの本名。





わかったところで、奥の個室からカチリと高い音が聞こえた。




タイムリミットだ。





バベルの塔を急ぎ建築し、職員室を飛び出したところで、奥の個室の戸が開く。


時計を確認すると、彼が鍵をかけてから丁度30分が過ぎたところだった。




流石は浪瀬。

有言実行してくれちゃいましたね。

お陰で目的のひとつは達成。





ーーーわたしは、あの人がいきなり文通をやめた理由を知りたいの。

ーーーどうか、この人ともう一度繋げてください。






人は分かった。

繋げることは出来る。

けど、理由は?

羽鳥空が運良くトイレに来てくれるか。

否。

保証もなければ時間もない。

顔を変えて接触をはかるのが一番現実的か。



なんにせよ、実行は明日以降になる。







足音をなるべく立てないように、学校を後にした。