からからと。
優雅に引き戸を開いたのは、美しさと精悍さを併せ持つ青年。
「こんにちは」
彼は、顔に合った綺麗な声を、その唇から奏でる。
雑然と机の並んだ広い部屋に、ひとつだけあった人影が盛大な音と共に立ち上がる。
それはヒールを鳴らし、彼に駆け寄った。
「忍君、待ってたのよ」
教師の面を捨てた、女の顔が浪瀬に擦り寄った。
浪瀬はそれに応え、腰を抱く。
「ふふっ、その間いい子で俺の事だけを考えてくれた?」
「もちろん」
甘やかすような甘い声に、甘えた声が返る。
浪瀬はそのまま流れるように、彼女を奥の個室に連れて行く。
そこの扉がふたりを飲み込み、固く閉じた。
カチリ。
と、その部屋は防音仕様だが、中から鍵をかけられた音は静かな職員室を通り過ぎ、廊下まで届いた。
さあ、30分のカウントの始まりだ。
私は壁に預けた背を離し、人の居ない職員室へと入る。
件の教室に関わる教師は、3人。
単純計算で、1人10分。
けれど、そんな目安あてにならない。
探れる資料の量も違うし、有るか無いかの2択なのだから………って、出来もしない確率計算したって仕方ない。
今考えることは、目の前の机に空色のヒヨコにつながる手がかりはあるのか。
それだけです。


