どのくらい待たされたか。
待っている身としては、長かったとだけ言っておく。
目の前で片脚抱えて悶える男を見て、何が楽しい?
なのに奴ときたら。
「んじゃ行こうぜ!」
と、治った途端に先を行く。
ちょっと待て。
待ってあげていた私に礼のひとつもなし。
これじゃあ私が引き止めてたみたいじゃない。
「浪瀬、ストップ!」
いや、引き止めたいんだけどね。
「なんだよ、十分待っただろ」
「私が、待ったのよ。今度は貴様が待つ番。作戦会議よ」
「廊下の真ん中で作戦とは、堂々としたものだな」
呆れ気味に振り返るこいつは、腰に手を置き、どうにも偉そうだ。
でも、一応足を止め、聞いてはくれるらしい。
「んじゃ、一旦教室に戻りましょうか」
親指でくいと出てきたばかりの教室を指す。
「手短に頼むぜ」
「もちろん」
そこに入り、戸を閉めた。
「さて」
手近な机に座り、足を組む。
「確認しましょう。浪瀬の目的は、テストの問題用紙をもらうことで間違いない?」
浪瀬は扉に背を預け、腕組みした。
「ああ。野枝は空色の手紙の人探しだよな」
「ええ。同じ字を書く人を片っ端から探していくつもり」
打ち合わせは、言葉少なに済んだ。
「………………決まりだな」
「そうね」
「10分でいけるか?」
「1時間」
「却下。15分」
「30分」
「………保証はできないぞ」
「うん。そう言いながらやってくれる忍クン大好きだよ」
「チッ……。調子いいこと言いやがって」
話し合いは終わりだ。
「この貸しは高くつくからな!」
浪瀬が自身の背中の扉を開け放ち、一歩進み出る。
私もその後に続いた。
さあ、仕事を始めよう。


