足早に教室を出ると。
「ぁ………」
「よっ」
すぐ隣の壁に凭れた浪瀬がひらひらと手をふった。
表情が消えたのが、自分でもわかる。
貴様、帰ったんじゃなかったのですか。
この感情は、怒りか、呆れか、諦めか。
それとも全く別の何かか。
ただひとつ、確かなことは。
貴重な時間を無駄にしてくれてんじゃないわよ。
待ち伏せするなら他を当たれってもんですよ。
………あ、これ怒りだわ。
「……………」
「……………」
前を抜けようとすると、彼の長い脚が邪魔をする。
横歩きで脚の届かないところまでいくと。
ドンッ!
「……………っ!」
「……………………」
と、私のすぐ斜め前の壁に、浪瀬の足が叩きつけられた。
背中側に囲うように回された腕は、私の斜め後ろの壁に繋がっている。
奴は逃がしてくれる気は無いらしい。
てか、瞬発力凄いのですね。
至近距離で、見上げる私、見下ろす彼。
なぜでしょう、イライラする。
眉間にしわを寄せれば、彼の口角が上がった。
嫌がらせか。
不本意にも見つめあって………否、睨み合っていると、浪瀬が口を開く。
「俺様は今から職員室に行ってくる」
妙に色気のある声を使って、何の宣言ですか。
「……それが?」
「何か言うこと、あるだろ?」
変なフェロモンばらまいて、何を言わせたいんだ、この男は。
それに今の時期、職員室は生徒の立ち入り禁止。
「俺様の協力者がひとりで待ってるはずだからな。野枝のぶんも貰ってきてもいいんだぜ?」
「バカにしないでもらえますかー」
貰ってきても、って、テストは共通なんだから、コピーすればいいじゃない。
でも、注目すべきはそこではない。
「………………職員室、か………」


