トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐






ひきだしの真ん中に、目立つように投函した。

あの人に届くことを祈って。

願わくば、もう一度。

ヒヨコさんからの手紙を運んでくれますように。






3週目。

今日もひきだしは空だった。






いずれこうなることは、知っていた。


顔も名前も知らない。

繋がりは、この机だけ。


この手にあるヒヨコさんからの手紙が、わたしたちが確かに繋がっていたことの証明。


だから、寂しい気持ちと同時に、信じられないと頭のどこかが声をあげる。


知らなくていいと思っていた。

だけど今はとても知りたいと思う。


あまりにも身勝手だとはわかっているけどね。


文通をやめるなら、やめるとひとこと言ってくれたらいい。

向こうから始めたくせに勝手にやめるなんて、そんな勝ち逃げのような真似は許さない。



でも、許さないとは言いながら、あの人を知る手段をわたしは持っていない。


出来ることはこうやって、手にとってくれているかもわからない手紙を投函することだけ。



授業合間の休み時間。


教科書で防護壁を形成し、ペンを持つ。




「校舎裏に一番近い女子トイレには、なんでも相談に乗ってくれる神様がいるんだって」




いつもは雑音にしか聞こえないクラスメートの声が、やけに鮮明に聞こえた。


便箋に乗るはずだったペンが空で止まる。




「なんでも? あたしは恋の相談って聞いたけど」

「さぁ。でも、いろいろ解決してるらしいよ。迷子のペットが見つかったり、彼氏欲しい時にちょうど告られたとか、効果あったって人多いし」

「それただ運が良かったってだけじゃね?」

「言えてるー」

「それよりさぁ、今日の…………」



なんでも相談に乗ってくれる神様。

効果はあるらしい。



だったら、わたしのとる行動はひとつ。


放課後になったら、そのトイレに行こう。