それは、本当に偶然だった。



「浪瀬くん、付き合ってください!」




放課後、校舎裏に植えてある木にもたれて寝ていると、そんな女の高い声が近くで聞こえた。




しかもそれが告白の決まり文句だったから、眠気なんてすっ飛ぶほどには気になってしまった。


もたれていた木から顔を少し覗かせ、後ろの様子を窺う。





女の方は、はっきり言って何の特徴もない普通の子。



対する男の方は、背も高く整った顔立ちをしている。





彼のことは私も知っている。


名前は浪瀬忍(なみせしのぶ)。



同じクラスということもあるし、入学から1月にして、校内一モテると噂の奴だから。