書き終えた便箋を二つ折りにし、ノートに仕込んでいた同柄の封筒に包む。
あらかじめ表に『空色のヒヨコさんへ』と書いていたそれ。
机の下に滑らせ、封にチューリップのシールを貼る。
あとは、ひきだしに投函するだけ。
終われば何食わぬ顔でつまらない授業に合流した。
右手で板書しながら。
空いた方の手で、壁を崩して開いた教科書から、今読まれている部分を探す。
意外と先に進んでいて、書かれていることの理解が追いつかない。
だけども一応ノートにとる。
もとより、教科書を読むだけの授業なのだ。
ノートなど、必要ないのかもしれないけど。
怒られないとわかっていても、多少の恐怖心はあるわけよ。
周囲の人々のように、堂々と別のことに手をつける勇気は、今のわたしには無い。
こうして、顔も名も知らない人との文通が始まった。
これが、5月を過ぎた暖かい日の話。
それからというもの。
毎週のこの時間がとても楽しみで、何気ない毎日が鮮やかに映った。
学校近くのどこのラーメン屋が美味しい。
新発売のコンビニ限定お菓子。
道端の花が綺麗だということ。
空色のヒヨコさんは、些細な日常の話を振ってくれた。
わたしもなにかお返ししたくて。
新発売のカップラーメンについて。
お菓子とジュースの飲み合わせ。
果てには、道端のゴミはどうしてそこにあるのか。
などという話題で対抗した。
ゴミは、我ながら苦しかった。
道端の花に、人の手の入れられた花壇が勝てるとは思えなくて。
花繋がりの、土の花で、埖、ゴミ。
変な罪悪感に襲われて、その日の帰りは埖拾いしながら帰りました。


