「そう言う野枝も、ぶりっこのえの顔やめねぇのか?」
「うん、私はこのままで。平凡野枝だと後々不都合が、ねぇ」
「そうかよ、残念。せっかく野枝とデートできると思ったのによ」
「私は私でしょ」
使用済みのメイク落としを鞄に放り込んだ。
一瞬遅れて。
「あっ、浪瀬じゃん」
「本当だー、偶然!」
女2人に背中から声をかけられて、浪瀬の肩が跳ねた。
「と、野枝。さっきはこいつらの事、教えてくれてアリガト」
「お役に立ててよかったですわぁ」
山本愛奈という村尾凌太の彼女と、加悦彩花という森田孝啓の彼女に笑みを投げる。
「つか、どうしてお前らがここにいるんだ?」
浪瀬の問いに応えたのは、村尾と森田だ。
「なぜか俺達がトリプルデートしてるところに現れて……」
「拉致られて、これから説教コースなんだよ……」
軽く顔を青ざめさせる彼らを、私と浪瀬の隣に押し込み、逃げ道を塞ぐように彼女達は通路側に座る。
そうして、当然のように彼女達4人は私と浪瀬と相席した。
客いないし、席いっぱい空いてんですから、他の所行ってくれませんかねぇ。
助けを求めて浪瀬に目線を送ると、首を横に振られた。
この2組のカップルに幾度となく巻き込まれてきたであろう彼が言うのだから、仕方ない。
壁際に追いやられ、逃げ道もない事ですし。
諦めてパフェを食べ進める。