トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



「いい気味だな、あいつら」



隣の壬生君がニヒルな笑みを浮かべる。




「こんだけ痛い目見りゃ、もう嫌がらせしてくることも無いだろうし、良かったじゃねぇか」




「今日は!」




気がついたら大声が出ていた。




「いろいろとありがとう、助かりました」




「どういたしまして。彼女達はあんなだし、帰るなら送って行くよ」




「いいえ、初めて会った人にそんなことまでさせられませんから」



「気にしなくていいのに」



「ここまで付き合ってくれただけで充分なんです」



おかげで、わたしが笑われることは無かったから。


だけど、人の不幸を笑う人と一緒に居て、気分のいいものじゃない。




「最後まで付き合わせてよ。乗りかかった船だし、ね」



「恋人ごっこはこれでおしまい。じゃあね、バイバイ」



これ以上、壬生君の顔を見たくなくて、驚くほど自然に上坂さんと大崎さんの方に足が向いていた。




「あの………」



膝をついて、椅子に座った彼女達を見上げる。




「なに? 二股されてたあたし達を笑いに来たの?」



わたしはぶんぶんと首を横に振った。



「違う、謝りに来たの」



「謝ってほしい、じゃなくて?」




大崎さんに聞かれたので、わたしは顔をあげて目を見て答える。




「壬生君は、ただの通りすがりで、彼氏なんかじゃなくて。……嘘ついてて、ごめんなさい」




腰を折り、頭を下げる。


暫くそうしていたけど、返事がなくて不安になる。




どうしよう、やっぱり怒ってる?




「じゃあ、スマホ貸しなさいよ」


「………スマホ?」



「本当に悪いと思ってんなら、スマホ貸しなさいよ!」



戸惑いがちに顔をあげると、上坂さんは顔をそらした。




わたしに差し出す手のひらと、彼女の赤らんだ顔を交互に見ていると、大崎さんに睨みつけられた。



「絵里子の言うことが聞けないっていうの?」



「いや、あの…………スマホ、持ってない、です」



「はぁ? 現役高校生が持ってないはず無いでしょ!」



「あの、ほんとに………」



慌てて鞄から折りたたみのケータイを出し、上坂さんの手のひらに乗せる。



彼女はそれを手慣れた様子で操作した。





「ん」



「あっ……」



目の前でわたしのケータイが落ちるのを、両手でキャッチする。